VPNを選ぶとき、「五眼同盟(ファイブ・アイズ)」や「14アイズ」という言葉を目にしたことはないだろうか。これらは国家間の情報共有同盟を指す用語で、VPNプロバイダーの本社がどの国にあるかによって、プライバシーの安全性が変わる可能性があるという文脈で語られることが多い。
この記事では、五眼同盟・9アイズ・14アイズの仕組み、VPNのプライバシーへの影響、そして安全なVPNの選び方について詳しく解説していく。

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五眼同盟(ファイブ・アイズ)とは
五眼同盟(Five Eyes / FVEY)は、第二次世界大戦後に形成された英語圏5か国の情報共有同盟だ。元々は通信傍受(シギント)の情報を共有するために設立されたもので、英米協定(UKUSA Agreement)が基盤となっている。冷戦時代はソ連の通信傍受が主な目的だったが、現在ではインターネット上の通信データや監視情報の共有にまで拡大しており、デジタル時代のプライバシーに大きな影響を与えている。
五眼同盟の加盟国
- アメリカ合衆国
- イギリス
- カナダ
- オーストラリア
- ニュージーランド
これらの国に本社を置くVPNプロバイダーは、政府からのデータ提出要求や監視命令の対象になる可能性がある。
9アイズ・14アイズとは
9アイズ(Nine Eyes)
五眼同盟の5か国に、以下の4か国を加えた拡大同盟だ。
- デンマーク
- フランス
- オランダ
- ノルウェー
五眼同盟ほど緊密ではないが、情報共有の枠組みに参加している。
14アイズ(Fourteen Eyes)
9アイズにさらに以下の5か国が加わった同盟で、正式名称は「SIGINT Seniors Europe(SSEUR)」という。
- ドイツ
- ベルギー
- イタリア
- スウェーデン
- スペイン
14アイズに含まれる国に本社を置くVPNは、間接的に情報共有ネットワークの影響を受ける可能性がある。
五眼同盟がVPNのプライバシーに与える影響
データ保存の強制
五眼同盟加盟国の中には、ISPや通信事業者にユーザーのメタデータ保存を義務付けている国がある。オーストラリアは通信メタデータの2年間保存を法律で義務化しており、イギリスの調査権限法(Investigatory Powers Act)も広範な通信データの保存を要求している。
国境を越えた情報共有
五眼同盟の特徴は、ある国で収集された情報が他の加盟国と共有される点にある。つまり、自国の法律では収集が難しいデータを、同盟国を通じて間接的に入手できる仕組みだ。VPNユーザーのデータが同盟国間で共有されるリスクがある。
秘密の監視命令
アメリカのNSL(国家安全保障書簡)やFISA(外国情報監視法)のような仕組みにより、VPNプロバイダーに対して秘密裏にデータ提出を命じることが可能だ。しかも、その命令を受けたことすらユーザーに公表できない「箝口令」が付くケースもある。

五眼同盟の外にあるVPNは安全か?
管轄国だけでは判断できない
五眼同盟・14アイズの外に本社を置くVPNが自動的に安全というわけではない。VPNのプライバシーは、管轄国の法律だけでなく、以下の要素によっても左右される。
- ノーログポリシーの実効性(第三者監査の有無)
- RAMのみサーバーの採用
- 暗号化技術の品質
- プライバシーポリシーの透明性
- 過去の司法事例での対応
五眼同盟内でも安全なVPNはある
ExpressVPNの親会社であるKape Technologiesはイギリスに拠点があるが、ExpressVPN自体はイギリス領ヴァージン諸島に本社を置いている。また、RAMのみサーバー(TrustedServer)を使用しているため、仮にサーバーを押収されてもデータは残っていない。過去にトルコ当局がサーバーを押収した際にも、ログは発見されなかった。
NordVPNはパナマに本社を置いている。パナマは五眼同盟・14アイズのいずれにも属しておらず、データ保存の義務も課されていない。Surfsharkはオランダ(9アイズ加盟国)に本社を置いているが、RAMのみサーバーとノーログポリシーで対策している。
主要VPNプロバイダーの管轄国
| VPNサービス | 本社所在地 | 同盟との関係 | ノーログ監査 |
|---|---|---|---|
| NordVPN | パナマ | 同盟外 | Deloitte(6回) |
| ExpressVPN | 英領ヴァージン諸島 | 同盟外 | KPMG / Cure53(23回) |
| Surfshark | オランダ | 9アイズ | Deloitte(複数回) |
| ProtonVPN | スイス | 同盟外 | Securitum(5回以上) |
| CyberGhost | ルーマニア | 同盟外 | Deloitte(複数回) |
| Mullvad | スウェーデン | 14アイズ | 一部監査あり |
| MillenVPN | 日本 | 同盟外 | なし |
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プライバシーを重視したVPNの選び方
- 管轄国を確認する:五眼同盟・14アイズの外にある国が理想だが、それだけで判断しない
- 第三者監査の実績を確認する:大手監査法人による定期的な監査を受けているかが最も重要な指標
- RAMのみサーバーかどうか確認する:物理的にログが残らないインフラは信頼性が高い
- 透明性レポートの有無を確認する:法執行機関からの要求件数と対応を公開しているサービスは透明性が高い
- 過去の司法事例を調べる:実際にデータ提出要求に対して「データがない」と証明した実績があるか
五眼同盟とVPNに関する誤解と真実
誤解1:五眼同盟の外なら安全
五眼同盟に属さない国に本社があっても、その国自体がデータ保存義務を課している場合がある。また、五眼同盟加盟国と個別に情報共有協定を結んでいる国もあるため、管轄国だけで安全性を判断するのは早計だ。
誤解2:五眼同盟内のVPNは使うべきではない
管轄国よりも、技術的な対策(RAMのみサーバー、暗号化、キルスイッチなど)とノーログの実証(第三者監査、司法事例)の方が実質的な安全性に直結する。五眼同盟内でもExpressVPN(英領ヴァージン諸島は法的にはイギリスの海外領土だが、独自の法体系を持つ)のように高い信頼性を持つサービスもある。
真実:重要なのは「データが存在しないこと」
どの国に本社があっても、そもそもデータが存在しなければ政府に提出しようがない。RAMのみサーバーで運用し、第三者監査でログの不存在を証明しているVPNは、管轄国に関わらず高い信頼性を持つ。これが五眼同盟問題に対する最も実用的な回答だ。
プライバシー保護のためにVPN以外にできること
暗号化メッセージアプリの利用
SignalやProtonMailのようなエンドツーエンド暗号化に対応したサービスを使えば、通信内容自体が保護される。VPNは通信経路の暗号化、メッセージアプリは内容の暗号化という、異なるレイヤーでの保護を提供する。
プライバシー重視のブラウザの利用
BraveやFirefox(プライバシー設定強化済み)を使えば、トラッキングや広告追跡を減らせる。VPNと組み合わせることで、IPアドレスの隠蔽とブラウザレベルのプライバシー保護の両方が実現する。
よくある質問
日本は何アイズに属している?
日本は五眼同盟・9アイズ・14アイズのいずれにも正式には加盟していない。しかし、アメリカとの日米安全保障条約に基づく情報共有の関係があるため、完全に無関係とは言い切れない。日本のISPには通信傍受令状(通信傍受法)に基づくデータ提出の義務がある。
14アイズ加盟国のVPNは使わない方がいい?
必ずしもそうとは言い切れない。Surfshark(オランダ)やMullvad(スウェーデン)のように、14アイズ加盟国に本社を置いていても、RAMのみサーバーやノーログポリシーで強固なプライバシー保護を実現しているサービスもある。管轄国よりも、技術的な対策と監査実績の方が実質的に重要だ。
五眼同盟の監視はVPNで防げる?
VPNはISPレベルの監視やデータ収集を防ぐ効果がある。しかし、国家レベルの監視機関(NSAやGCHQなど)が高度な手法を用いた場合、VPNだけで完全に防御することは難しい。VPNはプライバシー保護の重要な一層であるが、唯一の防御手段ではないことを理解しておこう。
五眼同盟の外にある国でもデータ保存義務があるケースは?
ある。例えばロシアやインドにはVPNプロバイダーに対してユーザーデータの保存を義務付ける法律が存在する。NordVPNは過去にインド国内のサーバーを撤去して、データ保存義務に対抗した事例がある。五眼同盟に属していない国でも、その国独自のデータ保存法に注意が必要だ。

まとめ
五眼同盟・9アイズ・14アイズは、国家間の情報共有同盟であり、VPNプロバイダーの管轄国がこれらに含まれる場合、政府からのデータ提出要求や監視の影響を受ける可能性がある。
しかし、管轄国だけでVPNの安全性を判断するのは不十分だ。第三者監査の実績、RAMのみサーバーの採用、ノーログポリシーの実効性など、技術的・制度的な対策を総合的に評価することが重要。
プライバシーを最優先に考えるなら、NordVPN(パナマ)、ExpressVPN(英領ヴァージン諸島)、ProtonVPN(スイス)のように、五眼同盟の外に本社を置き、かつ複数回の第三者監査をクリアしているサービスを選ぶのが安心だ。
参考:Cyber Insider – Five Eyes, Nine Eyes, 14 Eyes / Surfshark – 5-9-14 Eyes and VPNs / Top10VPN – VPN Jurisdictions
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