VPNを使うと、通信はVPNサーバーを「中継」して目的のサイトやサービスに接続される。この中継サーバーがどのような役割を果たしているのか、なぜ経由する必要があるのか、気になっている方も多いだろう。
この記事では、VPN中継サーバーの基本的な仕組みから、複数のサーバーを経由する「マルチホップ」の活用法まで、わかりやすく解説する。

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VPN中継サーバーの基本的な仕組み
VPNに接続すると、通信の流れは以下のようになる。
- あなたの端末がデータを暗号化し、VPNサーバー宛に送信する
- VPN中継サーバーがデータを受け取り、暗号化を解除する
- VPNサーバーが代わりに目的のサイトにアクセスする
- サイトからの応答をVPNサーバーが受け取り、再度暗号化してあなたの端末に送り返す
このプロセスにより、接続先のサイトにはVPNサーバーのIPアドレスが表示され、あなたの本当のIPアドレスは隠される。ISP(プロバイダ)からも、あなたが何のサイトを見ているかは見えなくなる。
IPアドレスやパケットの流れといった基礎から理解したい方は、ネットワークの入門書を1冊読んでおくと、この仕組みがぐっとイメージしやすくなる。
中継サーバーを経由する3つの目的
1. IPアドレスの隠蔽とプライバシー保護
中継サーバーを通すことで、接続先には自分の本当のIPアドレスが伝わらない。これにより、オンラインでの匿名性が向上し、位置情報の特定も困難になる。
2. 通信の暗号化
端末からVPNサーバーまでの通信はAES-256などの強力な暗号化で保護される。フリーWi-Fiなどのセキュリティが弱い環境でも、通信内容を第三者に盗み見られるリスクを大幅に減らせる。
3. 地域制限の回避
海外のVPNサーバーを中継することで、その国のIPアドレスでインターネットにアクセスできる。日本にいながらアメリカのサーバーを経由すれば、日本からはアクセスできないサービスに接続できる場合がある。逆に、海外から日本のサーバーを経由すれば、日本限定のサービスにアクセスできる。


マルチホップ(ダブルVPN)とは
通常のVPN接続は1つの中継サーバーを経由するが、マルチホップ(ダブルVPN)は2つ以上のVPNサーバーを連続して経由する仕組みだ。
マルチホップの通信の流れ
- あなたの端末がデータを暗号化し、最初のVPNサーバー(Entry Node)に送信
- 最初のサーバーで暗号化を一層解除し、2番目のVPNサーバー(Exit Node)に転送
- 2番目のサーバーで残りの暗号化を解除し、目的のサイトにアクセス
- 応答は逆の経路で返ってくる
マルチホップのメリット
- 二重暗号化によりセキュリティが向上
- 最初のサーバーは接続元IPのみ、2番目のサーバーは接続先のみを知る(1つのサーバーが全情報を持たない)
- 追跡や監視がより困難になる
マルチホップのデメリット
- 通信速度の低下:2つのサーバーを経由するため、通常のVPN接続より遅くなる
- レイテンシの増加:経由するサーバーが増えるぶん、応答時間も長くなる
- サーバー選択の制約:マルチホップ対応のサーバー組み合わせが限定されるサービスもある
日常的な利用(動画視聴、ブラウジング、SNSなど)では通常のVPN接続で十分であり、マルチホップが必要になるケースは限定的だ。
なお、VPN接続時の体感速度は自宅のWi-Fiルーターの性能にも左右される。古いルーターを使っている場合は、Wi-Fi 6対応の機種に替えるという選択肢もある(速度は環境によって異なる)。


マルチホップが有効な利用シーン
- ジャーナリストや活動家:高度な匿名性が求められる場合
- 検閲が厳しい国からの接続:二重の経由で追跡を困難にする
- 機密性の高い通信:業務上の機密情報を扱う場合の追加防御として
- プライバシーを最大限重視する方:VPNプロバイダ自体も全情報を把握できない構造を求める場合
マルチホップに対応した主なVPNサービス
- NordVPN:「ダブルVPN」機能として提供。特定のサーバーペアから選択可能
- Surfshark:「MultiHop」機能として提供。2つのサーバーを自由に組み合わせられる
- ProtonVPN:「Secure Core」として提供。スイス・アイスランド・スウェーデンを経由
- Mullvad VPN:マルチホップ接続をサポート。カスタム設定が可能
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VPNサーバーの選び方のコツ
速度を重視する場合
物理的に近い国のサーバーを選ぶ。日本国内での利用なら日本サーバーが最速になることが多い。
プライバシーを重視する場合
プライバシー保護に強い国(スイス、パナマ、アイスランドなど)に拠点を置くサーバーや、ノーログポリシーが厳格なサービスを選ぶ。
地域制限の回避を目的とする場合
アクセスしたいサービスが提供されている国のサーバーを選ぶ。日本のサービスなら日本サーバー、アメリカのサービスならアメリカサーバーを選択する。
よくある質問(Q&A)
Q. 中継サーバーの数は多いほうがいい?
A. サーバー数が多いほど選択肢が増え、混雑を分散できる。NordVPNは約6,400台以上、Surfsharkは3,200台以上のサーバーを世界各国に展開している。
Q. マルチホップと通常接続、どっちがおすすめ?
A. 日常利用なら通常接続で十分だ。速度を犠牲にしてでも匿名性を高めたい場合にのみマルチホップを検討しよう。
Q. VPNサーバーの場所はバレる?
A. 接続先のサイトからは、VPNサーバーのIPアドレスと所在国は見える。しかし、それがVPNサーバーだと特定されても、その先のあなたの本当のIPアドレスまでは追跡できない。
VPN中継サーバーのインフラストラクチャ
VPN中継サーバーがどのようなインフラで運用されているかも、サービス選びの参考になる。
物理サーバー vs 仮想サーバー
VPNサービスが使うサーバーには、専用の物理サーバーと、クラウド上の仮想サーバー(VPS)の2種類がある。物理サーバーのほうがセキュリティ面で優れている。NordVPNやExpressVPNは、重要拠点にRAMのみで動作するサーバー(RAMサーバー)を導入しており、電源を切ると全データが消去される仕組みだ。
RAMサーバーの意義
RAMサーバーはハードディスクを持たず、すべてのデータがメモリ上で処理される。サーバーが押収されたとしても、電源を切った瞬間にすべてのデータが消去されるため、ユーザーのプライバシーが守られる。ExpressVPNの「TrustedServer」やNordVPNのサーバーがこの方式を採用している。
こうしたデータ保護の考え方を体系的に学びたい方は、情報セキュリティの入門書を手に取ってみるのもよいだろう。


VPNサーバーの地理的配置とその影響
VPNサーバーがどの国や地域に配置されているかは、通信品質やプライバシーに影響する。
サーバー数と拠点数の違い
「6,400台のサーバー」と「111カ国に対応」は別の指標だ。サーバー台数が多ければ混雑を分散できるが、拠点数が多ければより多くの国のIPアドレスを取得できる。用途に応じてどちらを重視するか考えよう。
仮想ロケーションとは
一部のVPNサーバーは「仮想ロケーション」として運用されている。物理的にはオランダにあるサーバーが、エジプトのIPアドレスを発行するケースなどだ。検閲が厳しい国やインフラが不安定な国では、安全な国にサーバーを置きつつ現地のIPアドレスを提供する方式が取られることがある。
Tor over VPNとの違い
マルチホップと似た概念に「Tor over VPN」がある。VPN接続後にTorネットワークを経由する方式で、NordVPNの「Onion over VPN」がこれに該当する。
- マルチホップ:VPNサーバー2台を経由。速度低下は中程度
- Tor over VPN:VPNとTorの3ノード以上を経由。匿名性は非常に高いが、速度は大幅に低下する
日常利用にはマルチホップ、高度な匿名性が必要な場合にはTor over VPNと使い分けるのが現実的だ。
まとめ
VPN中継サーバーは、IPアドレスの隠蔽・通信の暗号化・地域制限の回避を実現する仕組みだ。マルチホップを使えば匿名性をさらに高められるが、通常の利用では1サーバー経由で十分な保護が得られる。
VPNサービスの選び方は「VPNの選び方完全ガイド」、各サービスの詳細比較は「VPNおすすめ比較」で確認してほしい。
参考:Qiita「ダブルVPN: マルチホップの仕組み」、NetXHack「マルチホップ(MultiHop)とは」、Surfshark「What is double VPN」
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